月がきれいですね

先日、ある字幕翻訳家の方とつばめグリルする機会があったのですが、
この方は自身で字幕の翻訳をつとめる傍ら、学生達の教鞭もとっていらっしゃる。

先生と教え子という関係であってもおかしくない年の差であるにもかかわらず、
映画関係の仕事で知り合って以来、若い私に対しても丁寧に接してくださる。

調子に乗ってオイラは、「でもさぁー」とか「だってさぁー」などとたまに口が滑る。
スミマセンスミマセン。

で、その会話の中で興味を引くものがあった。

「最近の若いのは、語彙力が低下してんだよね」
「ちょっと試しに I love you を翻訳させたら、もう酷いもんさ」
「僕はいつも二通りに訳せ、と伝えるんだが、好きとか愛してる、とか中学生かっての」

最近の若者は・・・云々ってのは、
2000年前のプラトンも言ってたとか、
5000年前のエジプトの石版に書いてあったとか、
今言ってる人も、昔言われてたってのはこの際置いておくとして。

とっさにそう言われて、自分で思いついたのは、

「ずっと一緒」 と 「守ります」 だった。

一呼吸置いて、

「僕と未来を」 と 「さようなら」 も来た。

奇を衒い過ぎなのかな、と思っていたら、

「面白い訳がね、あるんだよ」
「一つはツルゲーネフの片恋から、二葉亭四迷の”死んでもいい”」
「もう一つは、授業中の夏目漱石で、”月がきれいですね”」

漱石のほうは、学生が、”貴方を愛しています”と訳したところ、
そんな日本語は存在しないから、そういう文章が出てきたら
「月がきれいですね」とでも訳しなさい、日本人にはそれで通じる。

と言ったそうな。

ちなみに、かの悲観は楽観の藤村操クンもこの人の英語の授業を受けていたわけで。
彼の自殺後、漱石がわりと本気で凹んだとか凹まないとか。

「月がきれいで死んでもいいかよ!」
と、先人達の言葉のセンスに、フォークに刺さった唐揚げも落ちるわけだ。
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by chikara_mikado | 2007-05-11 16:13
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