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ある温泉町の国際映画祭 その3,5

「よこはまチェコ文化週間」もうすぐチラシとポスターが出来上がります。
そのうち皆さんの手元に届くと思います。

9月4日の航空券をとりました。
次は長期滞在です。一応2年の予定。

旅立つ前に、日本の夏を満喫しようと、3回海に行きました。
伊豆、名古屋の島、九十九里。
かなりこげている今日この頃、皆さんいかがお過ごしですか?

よくよく考えたら、向こうの夏休みは4か月近くあるわけでして、
戻ってくりゃいいだけのこと。美白しなきゃ。SK2しなきゃ。

宣伝したら満足しちゃった前回の続きです。
そろそろ飽きてきただろ、おまえら。知ってるぞ。

でも空気を読まない(読めないわけではない、たぶん・・)僕は、ガンガン続けますよ。
他の人のことなんて知らなーい。


3日目の続き。

・Fresh Film Selection  イギリス/フランス/ロシア/ポーランド/チェコ

2本目。
国内外の若者が制作した短編映画を5本まとめて上映。

時間をテーマに時計男と時計女の哲学的絡み合いを魅せられた後、
ハムスターで笑いを取るショートフィルムを経て、
ロシアの厳しい貧困階級の母と息子の最期の時間に触れ、
ポーランド郊外の一軒家で庭という小さな世界で過ごす子供たちの一日を素通りし、
軍人とその恋人をテーマにコマ撮りの実写版パラパラ漫画を堪能。

といった感じの5本立てでした。
うーん、書いてて意味わからん。

どれも学生ですとか新進気鋭ですとか若手のクリエイターさんによるものだそうで。
勢いがあってなかなかよろしかったですよ。オホホ。誰やねん。


・THE TRAP  サーダン・ゴルボヴィッツ/セルビア/2007/106分

3本目。
バルカン半島はセルビア版の「Crime and Punishment」、ドストエフスキーの「罪と罰」。
子供の難病に苦しむ父親の葛藤。
弱みに付け込む非道な要求を受け、息子の治療費の為にある男をヌッ殺す。
その男は、息子の友達の父親だった。しかも奥さんは美人でいい人。
なんだか僕が書くとどう足搔いてもシリアスな説明にならないけど、結構暗いお話。


・COLD FEET  アレクサンダー・アイク/ノルウェー/2006/80分
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4本目。
今年の映画祭の大当たり。

観客全体も温かい笑いに包まれて、いや、爆笑の渦かな。
上映終了後の監督とのやり取りの場では、世界中のプロモーターが
うちの国で上映しないか、なんつって交渉開始。

広報用のDVD版が5枚しかないって監督が口を滑らしたら、
俺にくれ、いや私にくれ、ワシに寄越した方がいいぞ。
なんて、関係者どもが群がってた、

でも観客の中に兵がいて、むしろ俺に売ってくれYO!

ふと思い出した。
映画祭って、観客にアピールするだけじゃなくて、
自分が作った作品を配給会社やらプロモーターやら、映画関係者達に
売り込みをかける場所でもあるんだなと。

いい作品のあとは、観終わった後みんながいい気持ち。
コメディだから内容は説明しづらいんだけど、
ノルウェーの若者達の休暇の過ごし方をリアルに描いたらしい。by 監督談
クリスマス、冬休み、友達の結婚式、学生時代の恋人。
みんなひっくるめて、ノルウェー流冬休み。
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こんなんだけど。



・Kid svensk(That Special Summer) 
ナンナ・フォルマン/スェーデン、フィンランド/2007/85分

5本目
今年の映画祭、2番目の大ヒット。
フィンランドからスウェーデンに移民として海を渡った母娘の物語。
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キルシはフィンランドからスウェーデンに移民した12歳の女の子。
父親が死んで以来、母のエステアと二人で生活してきた。

エステアは、夫の死によって無気力となり、決してスウェーデン語を学ぼうとしない。
言葉が話せず、社会に溶け込めない母親をキルシは疎ましく思っていた。

1984年の夏、キルシは学校のコンテストで優勝し、子供達の羨望を背中に受け、
夏休みの間ローカルラジオ局のリポーターになる権利を獲得する。

しかし母親にコメントを求める校長先生の声で、喜んだキルシの顔が歪む。
ろくに受け答えもできず、キルシの優勝を妬んだ同級生から野次が飛び、
キルシは俯いてしまう。

顔を下に向け、母を置き去りに一人早歩く帰り道。
エステアから、夏休みの間はフィンランドに帰ることを告げられる。

キルシはラジオ局のリポーターができなくなることに憤慨するも、
しょうがなく一緒に生まれ故郷に帰ることにする。

迎えに来たのは、エステアの幼馴染。
彼女の息子ジャンペは、キルシの幼馴染でもある。
二人はいつも兄弟のように暮らしていたが、この夏で二人の関係が微妙に変化する・・


自分の故郷(精神的な)だ、と言い切れる場所を持っていない12歳の少女。
フィンランドもスウェーデンも彼女にとってみたら、ただの国である。
自分のアイデンティティを確立しようともがけばもがくほど、
周りとの関係がギクシャクしていく。

幼馴染だった少年と過ごす一夏。
少女は成長する。

無気力の母に、自分の存在をもっともっと見て欲しい。
多感な少女は、その方法をみつけられない。

自分の故郷、原点を知ろうとするが、
知るべき事実が存在しない、と思い込んでいる。

そんな少女が実際にいた。
監督のナンナ・フォルマンである。

誰しもが大人になるまでに通る葛藤を、
そして多くの人が忘れていくソレを心に深く留め、
心地よい映像として世に生み落した。


この日、5本目のこの映画は夜の9:30に監督の舞台挨拶とともに始まった。
遅めの上映で、長編映画はこれがデビュー作となるナンナ。
期待薄と考えたのか観客もまばらで、周りの人たちはちょっと眠そうだった。

オイラも面白くなかったら寝ればいいや、なんて思いながら座席に着いたのだけれど、
監督の挨拶が面白くて、期待感が膨らんできたんですよ。

挨拶が済んだ監督とプロデューサーはリザーブの会場ど真ん中の席へ。
ガラガラだったんで僕もすぐ近くに陣取っていた。
左斜め前。

で、約1時間半。
一瞬もスクリーンから目が離れなかった。
なんも他のこと考えなかった。

観終わって、久しぶりにいい気分なオイラは、
図々しくも右斜め後ろの監督に、

「日本から来ました。とてもいい映画を観たので今日は気持ちよく眠れます。ありがとう。」

なんて言ってみた。偉そうに・・
でも、監督メッチャいい人。
そんな偉そうなオイラに、

「国際的にこの映画を公開するのは初めてなの。
私は一番最初に感想を伝えてくれた貴方を忘れないわ。」

とか言ってる。調子にのっちゃうよボク。


そうなんです。
気持ちよく眠れるし、監督が自分の過去をテーマにいい映画を撮れるってことは、
母と娘はバッチリ分かり合い、幼馴染との関係も微妙かついい具合に。今は知らんけど。
全てがうまくいったってことなんですよね。えがったえがった。

帰り道もいい気分。
知ってる人誰もいない街で、暗い道を一人で、ほろ酔い気分で。
とてもよく眠れた。

日本に戻って今日で約一か月。
今もよく覚えてるのです。
by chikara_mikado | 2007-08-18 04:15 | チェコのこと
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