チェコ市民・ハヴェル

Občan Havel (Citizen Havel) という映画を観ました。
ヴァーツラフ・ハヴェルが主人公のドキュメンタリーフィルムです。

チェコスロヴァキア大統領を経て、チェコ共和国初代大統領となったあの人。
作家、戯曲家としての顔も持つ。

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2005年、Ceska Televizeの調査による、
「最も偉大なチェコ人100人」で第3位に選ばれた御方。

ちなみに、

1位:カレル4世
2位:トマーシュ・マサリク
3位:ヴァーツラフ・ハヴェル
4位:ヤン・ジシュカ
5位:ヤン・コメンスキー

となっています。

ハヴェルさん以外の4人は、とっくに空の上なので、
現人神的なのは彼だけです。

ただ、神と言うにはあまりに庶民的で、
国民から近しい存在として愛される、
ビール好きのヘビースモーカーな71歳であります。

安部公房も好きらしいです。

しかし、若かりし頃の彼は1968年の「プラハの春」後に、
反体制運動の指導者として活躍。
また、人権抑圧に対する抗議・ヘルシンキ宣言の人権条項の順守を求める、
「憲章77」の発起人となる。

何度も逮捕され、投獄もされた。

そして、過酷な獄中を妻の手紙と自分の正しさの「確信」を支えに、
生き抜いた叛骨の人であります。

と、革命までの20年を5,6行で記すとは、端折りすぎだと
チェコ人から石を投げられそうですが、とにかくすごい人気。
大統領を2期務め引退した後も、ご意見番としてメディアに度々出没します。

1993年、チェコスロヴァキアが解体したビロード離婚後、
チェコ共和国初代大統領を選任する少し前からこのドキュメンタリーは始まります。

監督であるパヴェル・コウトツキーは、2006年の撮影中に事故で他界、
彼の友人であるミロスラフ・ヤネクが編集し、この作品を完成させた。
1992年からハヴェルの記録を撮ることに本人から賛成を貰ったそうな。

ってことは、なんだ。

13年分だか14年分を一挙大放出ってわけか。
これは貴重ではないですか!


と、ふと「ヨコハマメリー」を思い出す。

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この作品を撮った監督とは、チェコ映画祭が縁で知り合い、
地元が同じこともあり仲良くして頂いてるんだが、
この作品もまた構想・制作に10年以上を費やしているとか言っておられた。

ドキュメンタリー映画って、テーマの着想もされど、
長期間の撮影に耐えうる忍耐・気合みたいなものも必須だと思う。
そして、商業的な目的で撮るのではなく、自分の興味や好奇心、熱意を
映像化させるために、一心不乱になれなくては。

でも、かえってそういったモノが、人々に認められる。
でも、人々を意識するとダメになっちゃう。

難しいですよね。


そんなわけで、ハヴェルの13年を90kc(約540円)で観せてもらった。
なかなか良い買い物だったと思う。

政治的な場面が多く、彼の葛藤や周りの環境の変化が、丁寧に描かれていた。
それでも、スクリーンから受けるハヴェルの印象はとても人間的だ。

温かみがある。ユーモアも、毒もあるが、憎めない。
ハヴェルの一挙手一投足に、劇場は笑い声が響き、溜息が洩れる。
そして、観客が彼を愛すように、彼もまたチェコを国民を愛していることがわかる。

よれたジャンパーを羽織ってパブにいたとしても、果たして見分けがつくだろうか。
プラハの街中を普段着で歩く彼は、きっと今日もビールを飲むのだろう。

どこかですれ違いたい。



今よりも大分スリムな若かりしクラウスが、
ハヴェル・チェコ共和国初代大統領の誕生を握手で祝福する場面があった。

観客は大爆笑だった。
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by chikara_mikado | 2008-03-05 22:15
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